先日、当院に一つの切実なご相談をいただきました。
数年前に病院で「側弯症の角度が40度」と診断されていた方が、最近の検査で「60度」まで進行していることが分かったというケースです。病院では「手術も選択肢の一つ」と提示され、背骨を金属で固定することへの不安を抱えて当院の門を叩かれました。
「大人の体になってからは側弯症は進まないと思っていた」とショックを受けられる方は少なくありません。しかし臨床の現場では、成人期以降に角度が進行するケースに直面することがあります。
今回は、なぜ大人の側弯症が進行することがあるのか、そして手術を回避したいと願う段階において、整体院やピラティスがどのようなサポートを提供できるのかを客観的にお伝えします。

1. 成人の側弯症が進行する理由とは?
一般的に、骨の成長が止まれば側弯の大幅な進行は落ち着くと言われています。しかし、一定の角度(40〜50度前後)を超えている場合、成人以降もジワジワと進行していくことがあります。
その背景には、以下のような複数の要因が複合的に絡み合っていると考えられています。
- 加齢に伴う構造の変化:年齢を重ねるにつれて、骨と骨の間にある椎間板や関節に変形が生じることがあります。
- 筋力の低下と重力の影響:背骨を支える体幹の筋力が低下すると、重力による負荷に抗いにくくなり、非対称なストレスが骨格にかかり続けます。
- 骨密度の低下:特に女性の場合、ホルモンバランスの変化に伴う骨密度の低下も、骨格の安定性に影響を与える要因となります。
このように、成人の側弯症の進行は単一の理由ではなく、加齢・筋力・重力などが相互に影響し合って起こるものと考えられています。
2. 整体の現場でみられる「周囲の筋肉の過緊張」

側弯の進行に伴い、「歩くときや物を持ったときに腰が痛む」という自覚症状を訴える方が増えてきます。
当院の視点から身体を観察すると、歪みが生じている背骨をこれ以上崩さまいとして、周囲の筋肉(腰方形筋や脊柱起立筋など)が24時間体制で過緊張を起こしているケースが非常に多く見られます。当院ではこの状態を、筋肉が身を守るためにロックしてしまっている状態という意味を込めて、「筋肉の硬結」と呼んでいます。
この状態に対して、やみくもに強い力でもみほぐすようなマッサージを行うと、繊細な筋組織を傷め、かえって緊張を強めてしまうリスクがあります。 当院では、硬くなった組織に対して持続的な静止圧を加え、身体に負担の少ない形で緊張を緩めていくアプローチを行います。過度につっぱっていた筋肉が緩むことで、滞っていた局所の負担が軽減し、「身体を動かしやすくなった」「痛みが和らいだ」と感じる方も少なくありません。
3. コルセットの役割と、運動療法(ピラティス)の重要性
病院で処方されるコルセット(腰部ベルト)には、痛みを一時的に和らげたり、外側から姿勢を支えたりする極めて重要な役割があります。決して否定すべきものではありません。
一方で、ベルトだけに頼り切ってしまうと、自分自身の筋力で身体を支える機能が低下を招く懸念もあります。だからこそ、外的なサポートと並行して「運動療法」を取り入れることが重要になります。
ただし、側弯のケアにおいて、無理に上体を起こすような一般的な背筋運動(体幹の過伸展)は、症例やカーブのタイプによっては腰椎へ過度なストレスをかけ、状態を悪化させる危険性があるため注意が必要です。
当院では、背骨を前後のバランスでしっかり挟み込んで支えるために、特にお腹側や股関節まわりの体幹機能(当院ではこれを「フロントコア」と呼んでいます)を活性化させる専門的なピラティスを指導しています。自分の筋力という「内側のコルセット」を育てることで、重力に負けない軸を作っていきます。
4. 手術という選択と、保存療法のゴール

整形外科で行われる脊椎固定術などの手術には、痛みの根本的な軽減や、全体のバランス劇的改善といった非常に大きなメリットがあり、それによって人生の質(QOL)が向上した患者さんも多数存在します。一方で、ボルトで固定した範囲の動きには制限が生じるという側面もあります。どちらが正しいというわけではなく、医師と十分な相談の上で選択することが何より大切です。
その上で、「どうしても手術を避けたい」「今の状態のまま、痛みのない生活を維持したい」という方のために、整体やピラティスによる保存療法の選択肢があります。
当院のゴールは、骨の変形そのものを真っすぐに矯正することではありません。「たとえ骨格に曲がりがあっても、周囲の筋肉を良好な状態に保ち、自分の筋力で支えることで、痛みのない元気な日常生活を送り続けること」です。
病院での検査データや医師の初見(レントゲンやMRIの状況)をしっかりと確認させていただいた上で、お一人おひとりの状態に合わせた最適なケアプランを組み立てていきます。一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。
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