「肩こりくらいで整体に行っていいのかな?」
「病院ではなく、わざわざ整体に行くメリットって何?」
「その場では楽になっても、また戻るなら意味がないのでは?」
そんな疑問を持っている方も多いと思います。
最初に、整体院を経営している私から少し変なことを言います。
私は、誰にでも整体をすすめるつもりはありません。
整体にできることもあれば、できないこともあります。
病院へ行くべき人もいますし、自分で運動した方がいい人もいます。
「とにかく整体に通い続ければ健康になる」という考えにも、私は賛成できません。
では、それでも私が10年以上この仕事を続けているのはなぜなのか。
整体にしかない良さも、確かにあるからです。
この記事では、整体院側に都合のいいメリットだけではなく、
「病院と何が違うのか」
「どんな人なら整体へ行く意味があるのか」
「逆に整体へ行くべきではないのはどんなときか」
まで含めて、整体という仕事の役割を考えてみます。
整体の最大のメリットは「歪みを整えること」ではない
インターネットで「整体 メリット」と検索すると、
「骨盤の歪みを整える」
「血流を改善する」
「自律神経を整える」
「自然治癒力を高める」
といった説明をよく目にします。
もちろん、それぞれの整体院に考え方があるでしょう。
しかし私は、こうした言葉だけでは整体にお金を払って行く意味を十分に説明できていないと思っています。
私が考える整体の大きなメリットは、もっと単純です。
実際に身体に触れ、動かし、その場で身体の反応を確かめられること。
これです。
たとえば「腰が痛い」という方が来院したとします。
同じ腰痛でも、
立っていると痛いのか。
座っていると痛いのか。
前に曲げると痛いのか。
後ろへ反らすと痛いのか。
脚を動かすと変化するのか。
お尻や腰まわりの筋肉に触れたあと、動きや痛みがどう変化するのか。
一人ひとり違います。
「腰痛」という病名のような大きな箱を見るのではなく、目の前の人の身体がどう反応するかを見る。
これは、整体という仕事の面白いところだと思っています。
「触る→動かす→また確認する」を繰り返せる
整体では身体を触ることそのものが目的ではありません。
少なくとも当院では、
触る。
動かす。
変化を見る。
もう一度触る。
もう一度動かす。
この繰り返しを大切にしています。
たとえば肩を上げると痛い人がいたとします。
肩だけを揉んで終わるのではなく、
首を動かしたらどうか。
肩甲骨の動きはどうか。
胸郭は動いているか。
腕の位置を変えたらどうか。
施術したあと、本当に腕は動かしやすくなったか。
その場で確認します。
施術者が「緩みましたよ」と言って終わるのではありません。
本人の身体に変化が起きたかどうかを見る。
そこまで含めて施術だと考えています。
整体は「痛いところだけを見る」必要がない
これも整体のメリットの一つです。
たとえば腰が痛いからといって、必ず腰そのものだけに問題があるとは限りません。
股関節の動きが小さいため、腰が余計に動いている人もいます。
長時間座り続けていることが負担になっている人もいます。
運動不足の人もいれば、逆にスポーツをやり過ぎている人もいます。
肩こりでも同じです。
肩だけを揉んでも、
仕事中ずっと顔を前へ突き出している。
毎日何時間もスマートフォンを見ている。
子どもをいつも同じ側で抱っこしている。
そういった生活が変わらなければ、また同じ負担がかかります。
だから私は、
「どこが痛いですか?」だけではなく、「どうすると痛いですか?」を大切にしています。
さらに、
「普段何をしていますか?」
まで聞きます。
身体だけ見ても、生活を見なければ分からないことがあるからです。
病院ではなく整体に行くメリットは何なのか
ここは誤解してほしくないところです。
整体は病院の代わりではありません。
整形外科では、医師による診察に加えて、必要に応じてレントゲンやMRIなどの検査を行い、診断したうえで薬、注射、手術、リハビリテーションなどの治療が行われます。
整体には、それができません。
病気を診断することもできません。
薬を処方することもできません。
レントゲンもMRIも撮れません。
日本では「整体」そのものに国家資格制度もありません。厚生労働省も、整体やカイロプラクティックを、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師など国家資格制度のある施術とは区別しています。
ここをごまかしてはいけないと思っています。
では、
それでも整体へ行く意味は何なのでしょうか。
私は、病院と同じことができないからこそ、別の役割があると考えています。
身体を時間をかけて触る。
いろいろな方向へ動かす。
施術前後を比較する。
仕事や育児、スポーツなど日常生活まで聞く。
そして、
「この動きをするとつらい」
「ここを緩めると少し動きやすい」
「この姿勢を変えると楽になる」
という身体の反応を一緒に探していく。
診断とは別の角度から、身体と向き合う時間を取れること。
そこに整体へ行く一つの意味があると思っています。
「病院か整体か」という二択にする必要はない

「整形外科と整体はどちらがいいですか?」
と聞かれることがあります。
私は、この質問自体が少し違うと思っています。
役割が違うからです。
たとえば、
「これは骨なのか?」
「神経なのか?」
「腱が傷んでいるのか?」
「重大な病気が隠れていないか?」
を調べる必要があるなら、医療機関の仕事です。
一方、
「どんな動きをするとつらいのか」
「筋肉の緊張や身体の使い方が関係していそうか」
「施術や姿勢の変化によって症状が変わるか」
を細かく見ていくことは、整体が力を発揮しやすい部分です。
病院と整体は、どちらか一方を選んだらもう一方へ行ってはいけないものではありません。
必要なら病院で検査を受ける。
重大な問題がないことを確認したうえで、筋肉や身体の使い方について整体で考える。
こういう使い分けがあっていいと思います。
「病院で異常なし。でもつらい」という人もいる
実際の現場では、
「病院で検査を受けたけれど、大きな異常はないと言われました」
という方もよく来院します。
これは、
「何も問題がない」という意味とは限りません。
画像検査で大きな異常が確認されなかったとしても、肩こりや腰の張り、動かしにくさなど本人が感じている症状まで消えるわけではありません。
そんなときに、
どの動作で症状が変わるのか。
どの筋肉に強い緊張や圧痛があるのか。
身体を動かしたとき左右差があるのか。
日常生活で同じところへ負担をかけ続けていないか。
そうしたことを改めて見ていく余地があります。
ただし、
「病院で異常なし=整体で治せる」でもありません。
症状が続く、悪化する、今までと違う症状が出てきた場合には、もう一度医療機関で評価を受けることも必要です。
整体へ行く前に、まず病院へ行った方がいい人もいる

ここは整体のメリット以上に大切です。
何でも整体で様子を見るべきではありません。
たとえば腰痛の場合でも、日本整形外科学会は、安静にしても軽くならない痛み、徐々に悪化する痛み、発熱、脚のしびれや力が入りにくい状態、尿漏れなどを伴う場合には、速やかな整形外科受診を勧めています。
急激な筋力低下や麻痺、排尿・排便の異常、重大な外傷、発熱を伴う強い痛みなどがある場合も、整体より先に医療機関を考えるべきです。
突然経験したことのない激しい頭痛や胸の痛みなども同様です。
「整体で何とかできるかもしれない」と粘る場面ではありません。
整体師に必要なのは、何でも施術することではなく、
「これは自分たちが触るべきではない」と判断することでもある
と私は考えています。
整体にもデメリットはある
整体のメリットだけを書けば、整体院にとっては都合がいいでしょう。
でも、利用する側からすればデメリットも知っておくべきです。
まず先ほど書いたように、「整体」そのものには国家資格制度がありません。
同じ「整体院」という看板でも、教育歴、経験、施術方法、考え方はかなり違います。
料金も基本的には自費です。
さらに、施術だから必ず安全というわけでもありません。
厚生労働省は過去に、整体やカイロプラクティックなどの手技による健康被害について注意喚起につながる資料を公表しています。
だからこそ、
「強ければ効く」
「痛いほど治る」
「骨をボキボキ鳴らせば整う」
といった単純な考え方には注意が必要です。
本人の状態や年齢、既往歴などによって、施術方法は変えるべきです。
整体に行く意味があるのは、どんな人?

私は、
肩こりや腰の張りなど筋肉・関節周辺の不調が繰り返している。
姿勢や仕事、育児、スポーツなど特定の動作で症状が変化する。
医療機関で重大な疾患が否定されているものの、不調が残っている。
身体を施術してもらうだけでなく、自分の身体の使い方も見直したい。
そんな人には、整体を一つの選択肢として考えてもよいと思います。
反対に、
「どんな症状でも整体へ行けば治してもらえる」
という期待で来ると、整体の役割とは少しズレてしまうかもしれません。
「通い続けること」は整体のメリットではない

ここは、整体院を経営する人間としてあえて書いておきたいところです。
整体業界では、
「定期的なメンテナンスが大切です」
という言葉をよく使います。
もちろん、定期的に身体をケアすることで楽に生活できる方もいます。
整体そのものが好きで、定期的に受けたい人もいます。
それも一つの利用方法でしょう。
しかし、
毎週整体に通わなければ身体を維持できない。
それが全員にとって理想とは思いません。
本来、自分の身体を一番長く使うのは自分自身です。
整体師ではありません。
身体を動かすのも自分。
仕事をするのも自分。
眠るのも自分。
食事をするのも自分です。
施術者が触れられる時間など、一週間168時間のうち、ほんのわずかしかありません。
だから、
施術だけですべてを解決しようとすることには無理があります。
整体でできることと、運動でしかできないことがある
筋肉が硬くなっていて身体を動かしにくい。
痛みがあって運動する気になれない。
そんなときは、まず人の手を借りる意味があります。
当院では筋肉の緊張や圧痛を確認しながら、必要に応じてトリガーポイントへの施術などを行っています。
しかし、施術を受けているだけで筋力がつくわけではありません。
身体の使い方を自分のものにするためには、自分で身体を動かす必要があります。
そこで当院では、整体だけで終わらず、必要に応じてストレッチや運動、ピラティスなども提案しています。
私はよく、
「整体でブレーキを外して、運動でアクセルを踏む」
と考えています。
身体がつらくて動けないときには、まず施術によって動きやすい状態を目指す。
動けるようになってきたら、自分自身で身体を動かす。
最終的には、
「整体に行かないとダメ」ではなく、「自分でも身体を管理できる」
ところへ近づいていく。
その方が健全です。
当院がトリガーポイントを使う理由

以前のこの記事では、「トリガーポイント」についてかなり詳しく説明していました。
トリガーポイントとは、一般に筋肉内で圧痛があり、離れた場所にも痛みを感じることがある部位を説明するときに使われる言葉です。
当院でも、首・肩・腰などの筋肉を触った際に強い圧痛があり、その部位への施術によって身体の動きや症状が変化する場合には、施術の参考にしています。
ただし、
「すべての肩こり・腰痛の原因はトリガーポイントです」
とは考えていません。
筋肉だけで説明できない症状もあります。
関節、神経、生活習慣、運動量、仕事の環境など、さまざまな要因が関係します。
トリガーポイントも、あくまで身体を見るための一つの考え方です。
施術方法の名前より、その人の身体がどう反応しているか。
私はその方を大切にしています。
「治してもらう場所」から「自分の身体を知る場所」へ

整体というと、
ベッドに寝て、
施術者に身体を触ってもらって、
終わったら帰る。
そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
もちろん施術は大切です。
でも私は、それだけではもったいないと思っています。
なぜ自分の身体がつらくなったのか。
どんな動きが苦手なのか。
どんな生活で負担が増えているのか。
何をすると少し楽になるのか。
それを知ることも整体へ行くメリットです。
身体は毎日使います。
だったら、
整体師に身体を預けっぱなしにするより、自分の身体について少し詳しくなって帰ってほしい。
そう思っています。
まとめ|整体のメリットは「何でも治せること」ではない
整体には限界があります。
診断はできません。
検査もできません。
薬も出せません。
手術もできません。
重大な病気やケガが疑われる場合には、病院の方が圧倒的に重要です。
それでも整体には、
人の身体に実際に触れ、動かし、その場で変化を確認しながら、その人に合った方法を探していける
という特徴があります。
話を聞く。
身体を見る。
触る。
動かす。
変化を確認する。
生活を考える。
必要なら運動につなげる。
私は、そこに整体へ行く意味があると思っています。
そして最終的には、
「ずっと整体に通わないと不安な身体」ではなく、「自分の身体を自分でも扱える状態」を目指したい。
整体院長としては商売下手な考え方かもしれません。
でも、それでいいと思っています。
整体に通うことそのものが目的ではありません。
整体は、あなたがもう一度自分の身体を使いやすくするための、一つの手段です。
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