「重いものを持ったわけでもないのに、朝起きたら腰に激痛が走った」
「1週間経っても痛みが引かず、座って仕事をするのも限界……」
先日、このような腰痛でIT系のお仕事をされている方がご来院されました。
腰痛というと「重いものを持った」「腰をひねった」など、何か明確なきっかけがあると思われがちです。
しかし実際に身体をみていると、一つの動作ではなく、仕事中の身体の使い方や疲労、緊張などが重なった結果として痛みが現れたのではないかと考えるケースがあります。
今回も、身体だけを見ていては分からないことがありました。
3台のモニターと「固定された骨盤」
まず気になったのが、仕事中の環境です。
使用していたのは、骨盤を立てた状態を保ちやすい高機能な椅子。
一見すると、腰には良さそうです。
ところが仕事では、3台のモニターを頻繁に見ながら作業していました。
下半身は椅子によって安定している一方、視線を移すたびに上半身を左右へ動かします。
長時間これを繰り返せば、腰や背中には少しずつ負担が蓄積します。
さらに、IT系のお仕事で集中して画面を見続けていると、
「気づいたら何時間も身体に力が入っていた」
ということも珍しくありません。
今回、腰を確認すると、腰方形筋など腰まわりの筋肉にかなり強い緊張がみられました。
そこで初回は、まずこの身体的な緊張を減らし、腰を動かしやすい状態にすることから始めました。
2回目。筋肉は柔らかいのに、まだ痛い

そして2回目のご来院。
身体を確認してみると、初回にあれほど強く緊張していた腰まわりの筋肉は、かなり柔らかくなっていました。
ところが、
「先生、まだ痛いんです」
とおっしゃいます。
これは施術をしていると、とても重要な場面です。
筋肉が硬い。
だから筋肉を緩める。
筋肉が柔らかくなった。
だから痛みもなくなる。
もし身体がこのように単純なら、施術はそれほど難しくありません。
でも実際の痛みは、そんなに単純ではありません。
筋肉や関節の状態と、本人が感じている「痛み」は必ずしも一対一で一致するわけではないからです。
では、なぜ筋肉の緊張が改善しているのに痛みが残っているのだろう。
もう一度、お話を詳しく伺いました。
身体だけでなく「今、どんな生活をしているか」

そこで分かったのが、ちょうどお子様の受験を控えている時期だったことです。
仕事だけでも集中力を使う。
家に帰れば、お子様の受験が気になる。
親御さんにとっても、なかなか気を抜けない時期だったと思います。
ここで大切なのは、
「腰痛の原因はストレスだった」
と決めつけないことです。
腰痛は、筋肉や関節だけでなく、睡眠、疲労、仕事環境、心理的なストレスなど、さまざまな要素の影響を受けることがあります。
今回も、
仕事中の身体的負担 + 疲労 + 緊張が続く生活環境
が重なっていたと考えました。
痛みは単に「傷んだ場所から出てくる信号」ではなく、身体から入ってくる情報を脳が総合的に処理した結果として感じるものです。
そのため、組織の状態が改善してきても、痛みの感じ方がすぐに同じように変化するとは限りません。
今回のケースは、そのことを改めて考えさせられる症例でした。
「筋肉を緩める」だけが私たちの仕事ではない
私はこの症例を通して、改めて感じたことがあります。
私たちの仕事は、単に
「硬くなった筋肉を見つけて、柔らかくする」
だけではありません。
もちろん、筋肉や関節の状態を整えることは大切です。
しかし、その人がなぜ身体を緊張させているのか。
仕事ではどんな姿勢をしているのか。
睡眠は取れているのか。
最近、生活に大きな変化はなかったか。
身体だけでなく、その人が今どんな環境で生活しているのかまで考えることで、初めて見えてくることがあります。
教科書で学ぶ解剖学や生理学はもちろん重要です。
でも、実際に目の前にいる人の身体は、教科書のように一つの原因と一つの結果だけで動いているわけではありません。
だからこそ私たちは、毎回身体を確認し、その時の状態に合わせて施術を考える必要があると思っています。
お子様の受験を支えるためにも、まずご自身の身体を
お子様の受験が近づけば、
「自分がしっかりしなければ」
と思うのは自然なことだと思います。
でも、仕事をしながら家族を支え、自分自身も腰の痛みを抱えていたら、身体が休まる時間がありません。
そこで、
「腰の筋肉の状態はかなり変わっています。身体だけでなく、少しでも緊張を抜ける時間をつくっていきましょう」
とお伝えしました。
お子様を支えることと、ご自身の身体を休ませることは、どちらか一方を選ぶものではありません。
むしろ、ご自身が少し余裕を持って過ごせることが、ご家族を支える力にもなると思います。
腰痛は「腰だけ」を見ても分からないことがある

今回の腰痛では、仕事中の身体の使い方や腰まわりの筋緊張が一つのポイントでした。
しかし、それだけでは説明できない痛みが残りました。
そこで生活背景まで伺うことで、仕事、疲労、緊張が重なっていることが見えてきました。
もちろん、すべての腰痛がストレスや自律神経によって起こるわけではありません。
強い腰痛が続く場合や、脚のしびれ・筋力低下、排尿・排便の異常などがある場合には、整体よりも医療機関での検査を優先する必要があります。
そのうえで、検査では大きな問題がなくても腰痛が続いている場合には、
「どこの筋肉が硬いか」だけではなく、「なぜ身体が緊張し続けているのか」
まで考えてみることが、改善へのヒントになることがあります。
ふじさわ整体院では、腰だけを見るのではなく、身体の動きや仕事環境、生活習慣なども伺いながら、一人ひとりの状態に合わせた施術を考えています。
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