現在、腰痛でお困りではありませんか?
一口に腰痛といっても、ぎっくり腰、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、慢性腰痛など、症状や経過はさまざまです。そのため、すべての腰痛に同じ体操が合うわけではありません。
最近では、腰痛体操やセルフストレッチを、YouTubeや健康雑誌などが分かりやすく紹介していたりします。その中でも、一番初めに腰痛治療・腰痛予防の体操が誕生したのは、約100年以上も前になります。この時誕生したものは、『腰を曲げる体操』ウィリアムス体操です。この時は、この体操一択でした。
しかし、その後異論が唱えられていき、真逆の考えの『腰を反らす体操』マッケンジー・セラピーが誕生しました。後に出てきたものですが今では、後者のマッケンジー・セラピーの方が知名度があるものであったりします。
ですが、現在は、腰痛治療・腰痛体操の情報が多く、結局何をしたらいいのか迷ってしまいがちではないでしょうか?
先に結論をお伝えすると、腰を曲げる体操と反らす体操のどちらが合うかは、人によって異なります。体操をしたときに、痛みの強さや広がる範囲がどう変わるかを確認することが大切です。この記事では、二つの体操の違いと注意点を解説します。
腰痛でお困りの方、興味が湧いた方は是非最後まで目を通してみて下さい。
目次
- ウィリアムス体操の歴史【昔はウィリアムス体操一択だった!】
- ウィリアムス体操のやり方
- マッケンジー・セラピーの歴史【ウィリアムス体操と真逆の考えのマッケンジーセラピーの参入】
- 遠位化・近位化の考え
- マッケンジー・セラピーのやり方
- 椎間板は年齢とともにどう変化する?
ウィリアムス体操とは
今から、約100年前にアメリカの医師、ウィリアムス氏によって提唱されました。
ウィリアムス氏の考えでは、
腰を反らす動きが腰部への負担を増やすと考え、腰椎を屈曲させる「腰を丸める体操」を提唱しました。
ただし、これは当時の理論であり、現在ではすべての腰痛に腰を丸める体操が適しているとは考えられていません。
ウィリアムス体操とは、腰椎を屈曲させる(腰を丸める)体操です。
ウィリアムス体操の歴史【昔はウィリアムス体操一択だった!】
後に紹介するマッケンジー・セラピーが誕生するまでは、腰痛体操は『ウィリアムス体操』一択でした。
何故、ウィリアム理論が強かったのには、きちんとした理由があります。
ウィリアム理論とは、
当時は、加齢や長年の重力の影響によって腰の反りが強くなり、それが腰痛につながると考えられていました。そのため、腰を丸めて反りを減らす体操が広まりました。
ウィリアムス体操のやり方

ウィリアムス体操とは、腰椎を屈曲する体操です。
当院では、身体の状態や動作による症状の変化を確認したうえで、必要に応じて次のような運動をご案内しています。
目的:腰を丸める動きによって、痛みや脚の症状がどのように変化するかを確認します。
この体操は、腰を丸めたときに症状が楽になる方に合う場合があります。脊柱管狭窄症と診断されている方でも、症状や身体の状態によって適した運動は異なります。


- 仰向けになります。
- 両手で膝を抱えます。
- 腹筋と腕の力で、膝を胸に近づけます。
- 1秒(じわっと)止まってから、もとに戻ります。
回数を無理に増やす必要はありません。まずは少ない回数から行い、腰痛や脚のしびれが強くなる、痛みが脚の先へ広がる場合は中止してください。
マッケンジー・セラピーとは
1950年代に、ニュージーランドの理学療法士、ロビン・マッケンジー氏によって開発されました。マッケンジー理論とは、ウィリアム理論とは全く正反対のものです。マッケンジー・セラピーには、誕生秘話があり、患者さんを『先にベッドに寝ているように』とある患者さんに伝えました。この患者さんは、なかなか腰痛が改善しない方でした。マッケンジー氏が訪れた時には、ベッドは屈曲位、うつ伏せで寝ており、腰椎は思いっ切り伸展位の状態。マッケンジー氏は、冷や汗をかきました。ベッドの角度を戻し忘れていたのです。当時は、ウィリアムス理論が浸透しており、腰椎の伸展が腰痛の原因でした。ですが、患者さんは『今まで、一番腰の調子が良い』と。そこから、マッケンジー・セラピーが誕生したのです。誕生は1950年代ですが、日の目を浴び始めたのは1990年代からで、日本に普及し始めたのは2000年以降です。それほど、ウィリアムス理論が根強かったということです。
マッケンジー・セラピーでは、腰を曲げる・反らすなどの動きを繰り返し、痛みの強さや広がり方がどう変化するかを確認します。その反応から、その人に適した運動方向を判断します。
腰を反らす運動がよく知られていますが、すべての人に反らす体操を行う方法ではありません。
マッケンジー・セラピーの歴史【ウィリアムス体操と真逆の考えのマッケンジー・セラピーの参入】
マッケンジー理論ですが、大前提に『自分の腰痛は自分で治す!』セルフ・トリートメントという概念があります。主として、腰痛の治療・予防には腰椎の伸展が有効であるとしていますが、それ以外にもふたつの考えがあります。マッケンジー理論とは、以下の3つを症候群分類として分けた考えです。まず、以下の流れで分類をします。
問診
➕
腰を曲げる・反らす・捻るなどの反復動作を行います。その動作で、腰痛の有無があるかどうかを確認してから、分類をします。
| 内障症候群 | 機能不全症候群 | 姿勢症候群 | |
| 反復動作 テストで | 遠・近位化が 起きる | 遠・近位化が 起きない | 痛みを再現 出来ない |
| 実態 | 急性腰痛 | 慢性腰痛 | 姿勢に悪い 癖がある |
| 治療 | 内障反転 エクササイズ | ストレッチ | 姿勢矯正 プログラム |
遠位化:痛みやしびれが、腰から臀部、脚の先へ広がる反応です。運動を中止する判断材料になります。
近位化:脚や臀部に広がっていた症状が、腰の中央へ近づく反応です。その運動方向が合っている可能性を示します。
マッケンジー理論とは、
- 椎間板の内障症候群
マッケンジー法では、腰痛の一部に椎間板の関与があると考え、反復動作による症状の変化を確認します。
ウィリアムス体操でも出てきましたが、重力とは常に上から下に加わっています。私たちの日常生活の中での姿勢・動作は断然、腰を丸めていることが多いです。
姿勢→座位の生活が多く、腰椎は意識をしていないと屈曲位になる。
動作→靴・靴下・ズボンの着脱/洗顔/歯磨き/掃除/洗濯/料理/アイロンがけ/布団の上げ下ろしなどは、腰椎の屈曲位となる。
マッケンジー法では、反復動作によって痛みの範囲が腰の中央へ近づく「近位化」がみられるかを確認し、症状に合う運動方向を探します。
- 機能不全症候群
機能不全症候群とは、椎間板の内障が原因ではなく
筋肉・靭帯・腱などの軟部組織が順応性短縮を起こしている。要は、筋肉・靭帯・腱などが『硬く』『伸びるべきものが伸びない』『無理に伸ばすから痛い』という考えです。
機能不全症候群の腰痛の治療としては、『短縮した軟部組織を伸ばす』『痛む方向へのストレッチ』としています。(20秒~30秒×2~3回/日 2~3カ月に渡って)
- 姿勢症候群
姿勢症候群とは、姿勢に原因があるとしています。
治療としては、立ち方・座り方の姿勢の矯正です。
- 長時間の立位で腰が痛む→立位の姿勢の矯正(長時間の立位時は、骨盤を後傾位にしてみる)
- 長時間の座位で腰が痛む→座位の姿勢の矯正(座る時の工夫、腰椎前弯を維持する)
遠位化・近位化の考え

マッケンジー・セラピーでは、この画像のように遠位化・近位化という考えがあります。
- 遠位化:痛みやしびれが、腰から臀部、脚の先へ広がる反応です。運動を中止する判断材料になります。
- 近位化:脚や臀部に広がっていた症状が、腰の中央へ近づく反応です。その運動方向が合っている可能性を示します。
マッケンジー・セラピーでは、症候群分類で治療方針、体操を定めていますが、実際には
- 近位化をもたらすような動き(体操)、姿勢は継続し、
- 遠位化をもたらすような動き(体操)、姿勢は中止をするとしています。
マッケンジー・セラピーのやり方
これから、腰を反らす方向の体操を紹介します。まずは少ない回数から試し、痛みの強さや広がる範囲がどう変化するかを確認してください。
①基本姿勢
②動的エクササイズ
があります。
腰を反らすことで痛みやしびれが強くなる、症状が脚の先へ広がる場合は中止してください。脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアと診断されている方は、自己判断で行わず、医師や理学療法士の指示を優先してください。
①基本姿勢 肘立て伏臥(スフィンクス・ポジション)


- 肘を立てて、うつ伏せになります。
- 肘は肩の真下よりも少し前にして、腰椎伸展位を作ります。
- 腕が辛くなる様なら、胸の下にクッションやタオルなどを入れて下さい。
- 腰椎の伸展位が目的の為、首はうなだれて構いません。(首や肩が凝ってはかえって逆効果の為)
※この体操は、横になっている為、縦からの重力(軸圧)がかかりません。まずは短時間から試し、症状がどのように変化するかを確認してください。腰痛や脚の症状が強くなる場合は中止します。
②動的エクササイズ うつ伏せ編


- 写真の様に、うつ伏せになります。
- 手の位置は、肩よりもやや前に、肘は曲げます。
- 骨盤は床につけたまま、「腕立て伏せ」の腕を立てた時のように、肘を伸ばし、上半身を反らせます。
- 1秒静止します。
- 上記を交互に繰り返します。
まずは少ない回数から試し、体操中だけでなく、その後の痛みやしびれの変化も確認してください。症状が強くなる、または脚の先へ広がる場合は中止してください。
②動的エクササイズ 立位編


- 足を肩幅に開き立ちます。
- 両手を腰(骨盤)に当てます。
- 腰に当てた両手で、骨盤を前側に押し出します。膝は伸ばしたまま、後ろにのけ反らないように腰だけを前に出します。
- 頭は、足の真上、顔は正面を向いたまま維持をします。
- 1秒止まって、元に戻ります。
※この体操は、立位の為、軸圧がかかります。本当は、うつ伏せで行うのがいいのですが、仕事などで場所がどうしても確保出来ない時に(やらないよりはいいので)代わりにやって下さい。自宅にいる時は、うつ伏せのエクササイズ/仕事の時は、立位エクササイズと分けて行うといいです。
この体操もやればやるほど、痛みが『増した』『広がった』場合は、すぐに中止して下さい。
当院では、実際の患者さんに以下を処方します。(マッケンジー・セラピーのやり方では、腕の負担が大きい。このやり方は、腕の負担が少ない腰椎伸展位です。)


- まずは、四つん這いになります。
- 肘を伸ばしたまま、腰を床側に落としていき上半身を反らせます。手の位置は、肩の真下よりやや上にある方が行いやすいです。首を下げると、腰の力が抜けやすくなり、動作が容易になります。
- 1秒静止します。
- 上記を交互に繰り返します。
まずは少ない回数から試し、体操中だけでなく、その後の痛みやしびれの変化も確認してください。症状が強くなる、または脚の先へ広がる場合は中止してください。
結局どっちがいいの?【二つの体操の適応の分類について】

結局、腰痛体操は何が正しいの?

どちらの体操が合うかは、急性・慢性という期間や年齢だけでは決められません。実際に腰を曲げる・反らす動きを試したとき、痛みの強さや範囲がどう変わるかを確認することが大切です。
| 体操後の変化 | 判断の目安 |
|---|
| 痛みが軽くなる | 無理のない範囲で継続を検討 |
| 脚の痛みが腰へ近づく | 運動方向が合っている可能性 |
| 痛みが強くなる | いったん中止 |
| 痛みやしびれが脚の先へ広がる | 中止して専門家へ相談 |
| 脚に力が入りにくい・排尿排便異常 | 体操をせず医療機関を受診 |
椎間板は年齢とともにどう変化する?

椎間板の変化には個人差があり、年齢だけで一律に段階を決めることはできません。また、画像で変性が確認されても、必ず痛みが出るとは限りません。
まとめ ~当院の考え~
●すべての腰痛に効く万能な体操はありません。まずは、自分の症状と動作による変化を確認することが大切です。
●腰を曲げる体操と反らす体操のどちらが合うかは、急性・慢性や年齢だけでは決められません。
●体操によって痛みが軽くなる、脚の症状が腰へ近づく場合は、その運動方向が合っている可能性があります。
● 反対に、痛みやしびれが強くなる、脚の先へ広がる場合は、その体操を中止してください。もう一方の体操へ自己判断ですぐ切り替えるのではなく、医療機関や専門家へ相談しましょう。
● 脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアと診断されている方も、病名だけで体操を選ばず、医師や理学療法士の指示を優先してください。
●脚に力が入りにくい、両脚の強いしびれ、排尿・排便の異常などがある場合は、体操をせず早めに医療機関を受診してください。
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